2025年5月、書家・井関春龍(いせき・しゅんりゅう)さんが大阪・関西万博「ポップアップステージ西」にて書道パフォーマンスを行います。今回、出演にあたっての経緯や、当日披露する内容についてインタビュー形式を記事をお送りします。

——万博のステージに出演されることが決まった経緯について教えてください。
春龍:
書道の活動を始めて9年目になります。昔から、書のパフォーマンスを通じて日本の文化を伝えたいという思いはありました。ただ、子育てや環境の変化もあって、すぐに行動に移すのは難しい時期もありました。
今回、関西で万博が開催されることを知り、しかも「リング(大屋根)」の玄関口という特別な場所で表現できる機会をいただいたことで、自分がこれまで大切にしてきたことをかたちにして届けられるかもしれない、と思いました。今の自分にとって、意味のあるタイミングだったと感じています。
——今回は三木市で活動している方々との共演になるそうですね。
春龍:
三木市には地域ごとにいくつか太鼓の団体があり、それぞれが地元で活動を続けてこられています。今回はその中から、複数の団体のメンバーが集まり、特別編成のチームとして一緒に出演します。
私自身も三木で活動しているので、地元の方々と一緒に表現の場を共有できることが、純粋にうれしいです。普段それぞれが持っているエネルギーを、ひとつに重ねられたらと思っています。
——パフォーマンスの内容について教えてください。
春龍:
今回は、自分がこれまで取り組んできた書の表現に加えて、もう一歩踏み込んだアプローチをしたいと考えました。そのきっかけとなったのが、「鹿角の大筆」です。

この筆は、三木市にある金物業者・PROPさんに依頼して制作していただきました。素材には、害獣駆除された鹿の角を使っています。本来であれば処分されることの多い素材ですが、そこに命の痕跡や強さを感じて、あえて筆というかたちに活かすことにしました。
筆の制作にあたっては、SCIREさんにコーディネートをお願いしました。自分のアートパフォーマンスを、もっと広く、世界の人たちに届けたいという思いを伝えたところ、素材の提案から職人さんとの橋渡しまで動いてくださり、今回の制作が実現しました。

PROPさんは、ふだんは包丁などの柄を作る職人さんです。筆作りは初めてということでしたが、未知の分野に挑戦してくださったことに感謝しています。
この筆は、自分にとって単なる道具ではありません。荒々しさと静けさを持ち合わせた鹿角に、自分の身体と感情を通わせながら線を引く——その行為そのものが、今回の表現です。
衣装も、着物をリメイクしたドレスを着用します。布が持つ力、身体の動き、太鼓の響き、篠笛の音色、そして筆。すべてが溶け合う時間になればと思っています。
——場所も含めて、いろいろな意味を重ねたステージになりそうです。
春龍:
「リング(大屋根)」は、日本の伝統的な木造技術で建てられた建築物です。そうした空間で、私がこれまで学んできた書道の技と、仲間たちの太鼓の音が重なることに意味を感じています。
この舞台を通して、三木市という場所に根ざして生きている人たちの姿や、自分自身がやってきたことを、見てくださる方に少しでも伝えられたらうれしいです。
ひょうごフィールドパビリオンフェスティ バル2025
日時: 2025年5月27日(火)13:00
場所: 大阪・関西万博会場「ポップアップステージ西」
※リング〈大屋根〉のすぐ隣、実物大ガンダム展示近く